採卵について
採卵方法
当クリニックでは、卵子の獲得率が高く、また危険性の低い腟式採卵という方法を採用しています。これは、通常の診察で使用している経腟超音波(エコー)で確認しながら腟から卵巣に穿刺し卵子を採取する方法です。注射をするような鈍痛がありますが、専用の非常に細い針で行いますので、卵子が10個程度であれば痛み止めの坐薬または局所麻酔(別途費用が必要です)を使用し、静脈麻酔なしでも十分に採卵が可能です。採卵にかかる時間は10分程度です。なお、採卵を担当する医師を指定することは原則できません。
静脈麻酔
採取する卵子が多い場合、採卵する卵子が少数であっても卵巣の位置が悪く強い痛みが予想される場合、または患者さまの希望(痛みに弱い方、過度の緊張など)により、静脈麻酔を用いることができます。
しかし、保険診療で採卵する場合は、静脈麻酔を行うことができません。
これは静脈麻酔を行った場合、十分な安静と管理が必要となりますが、安静にできる部屋数には限りがあり、卵子凍結や着床前検査を自費診療で行う方を優先させていただくためです。また、静脈麻酔には別途費用が必要です。
静脈麻酔を使用する場合の約束事
- ・医師の指定はできません。
- ・前日24時以降は、飲食できません。(当日の朝も同様です。)
- ・採卵後に車の運転はできません。
- ・帰宅はお昼ごろになります。(午後はご自宅で静かにお休みください。)
- ・安全上、当日はお化粧、人工爪、マニキュアなどは落として来院ください。
- ・丸の内院では、日曜日は施行できません。
先進医療「SEET法」に必要なSEET液の凍結保存について
SEET液とは、採卵後に受精卵を胚盤胞培養した培養液のことです。このSEET液(培養液)を着床率の改善を目的に融解胚盤胞移植の数日前に子宮内に注入する治療をSEET法といいます。SEET液に含まれる受精卵からの物質により子宮が刺激され胚を受け入れやすい(着床しやすい)状態にすることが目的ですが、SEET法を行うためには採卵時にSEET液(培養液)を凍結保存しておく必要があります。
当院では保険診療で採卵し、胚盤胞培養を行った患者さま全員のSEET液を無料で凍結保存させていただきます。
先進医療として認定されているSEET法は保険診療との混合診療が可能ですが、治療効果に関しては、まだ十分なデータがありません。また、患者さまの費用負担も増えることから、凍結保存したSEET液を使用してSEET法を実施するかは、融解胚盤胞移植周期に医師とよく相談のうえ決定してください。
- ※SEET液(培養液)は少量です。1回の採卵で最大1〜2本が保存できます。
- ※凍結保存している余剰胚が全てなくなった場合、SEET液の凍結保存から1年が経過した場合は、自動的に廃棄させていただきます。
- ※SEET法は、夜間外来の時間帯には実施できません。ご注意ください。
- ※先進医療である「2段階胚移植」は「SEET法」不成功が適用条件となります。
- ※自費診療で採卵を行った患者さまは、SEET液の凍結を行いませんが、ご希望の場合は、お申し出ください。(別途費用が必要です)
スケジュール
- 採卵は通常、朝8:00~10:30に行います。
採卵の前に排卵の有無の確認をします。排卵が終わってしまった(約2%)場合は中止となります。 - 採卵します。採取にかかる時間は個数により異なりますが、5個~7個程度であれば、10分程度です。
- 麻酔を使用した場合は、回復室で2~3時間程度お休みいただきます。帰宅時間はお昼~午後となり、帰宅後は自宅で静かにお過ごしください。麻酔を使用せず採卵した場合は、20~30分程度お休みいただきます。その後お仕事に行くことも可能です。
- 帰宅前に、卵子の状態、精子の状態を説明し顕微授精の必要性などを相談させていただきます。このときに、移植の日時や凍結希望日などを決定します。
当日必要なもの
- □精子(ご提出の際に公的な身分証明書にて、ご本人様確認をさせていただく場合がございます)
精子は2時間以内に採取したものをお持ちください。当日、院内で採取すること(採精室の予約が別途必要)も可能です。
また、事前に精子を凍結保存しておくことも可能ですが、凍結精子を使用する場合は、精子の所見にかかわらず顕微授精となります。 - □「体外受精(IVF)申込書」「顕微授精(ICSI)申込書」
「体外受精周期における培養方法(先進医療)と受精方法、および未成熟卵取り扱いと余剰胚凍結の申込書」
「新鮮胚移植および融解胚移植に関する同意書(1年間有効用)」
「生殖補助医療保険診療申込書」(保険診療の場合)などの各種申込書、同意書 - □「移植同意書」(1年毎に必要)
- □費用(クレジットカード可)
保険診療で採卵された場合は、当日の支払いは採卵代のみとなります。自費診療の場合は、移植費用を除いた全額となります。
採卵時の卵子について
卵子の状態は、基本的に年齢に左右され、超音波やホルモン値で知ることはできません。採卵をすることにより初めて卵子の状態を知ることができるのです。以下に採取した直後の卵子を示します。卵子の状態の詳細については採卵の翌日以降に確認されます。
成熟卵子
受精に使用可能です。35歳未満の方は、採卵した卵子の約80%は成熟卵子です。
未成熟卵子
採卵した卵子の10~30%程度が未成熟卵子で、その状態により使用できる場合と、使用できない場合があります。
変性卵子
受精には使用できません。通常、変性卵子の割合は採卵した卵子の5%以下ですが、40歳を超えると3つに1つが変性卵子となります。



【未成熟卵子の取扱について】
未成熟卵子については、採卵後数時間は体外でも培養を試み、成熟卵子になれば予定通り使用いたします。体外培養を延長し翌日まで追加培養をした結果、成熟に達した場合でも妊娠率は極めて低くなるため、当クリニックでは原則として翌日までの培養は行いません。ただし採卵した卵子全てが未成熟卵子だった場合、医師の判断で体外培養を翌日まで続け顕微授精での受精を試みることがあります(追加培養については、希望される意思があるかを事前に伺います)。
精子調整法
体外受精を行う前に、前処理として精子調整を行う必要があります。これは細胞成分や白血球など体外培養に不必要な成分を事前に取り除くためです。また精子調整を行うことで運動機能の高い成熟した精子を集めることができます。精子の調整には「密度勾配遠心法、及びswim up法」を用います。なお、採精前の数日間(2日~7日が目安)は禁欲してください。また、顕微授精の場合には、「マイクロ流体を用いた精子選別」(先進医療)を行うことができます。
採卵当日:当日採取した精子をお持ちください。(事前に精子を凍結保存し今回使用する場合は不要です。)
採卵当日に精子を用意できない場合:排卵誘発開始前までに精子の凍結を行ってください。ただし、凍結精子は当日の精子と比べて受精率が低いため、必ず顕微授精を行います。
先進医療:マイクロ流体技術を用いた精子選別の導入
精子の頭部には遺伝情報であるDNAが含まれています。最近の研究で、精子DNAの損傷率が高くなると、精子の質が低下していることになり、自然妊娠や人工授精による妊娠の可能性が低くなることが判明しています。
また体外受精・顕微授精においても、精子の質が低下すると受精率や良い胚盤胞になる割合、妊娠予後がわるくなる原因になります。精子DNA損傷は、精子DNA断片化指数:DFIで評価でき、ZyMōtを使用すると、DFIは13.4%から0.4%まで低下しており、損傷精子の割合が極めて低い状態となることが期待されています。
詳しくは、先進医療:マイクロ流体技術を用いた精子選別 をご確認ください。
受精卵の培養
採取された卵子のうち成熟卵子のみが受精する能力を有しています。(「採卵時の卵子について」参照)
これらの卵子と調整された精子を、特殊な培養液と特別な環境下で培養を行います。(後述の「培養最新機器Geriタイムラプスインキュベーター」を参照)
翌日、受精の有無を観察しますが、下記のように卵子中央に核が2つ確認できると正常受精といえます。核が見えない場合は受精しなかったと判断します。また、場合により核数に異常(複数受精)が見られることがあり、これは異常受精としてその後の培養を中止します。
成熟卵子と良好精子の場合には、通常、顕微授精は行わず自然受精(媒精)を試みますが、受精する確率は約70%です。何も異常がない場合でも約30%は受精しないことになります。また35歳以降は年齢とともに受精率はさらに低くなります。
一方で精子が良好な場合でも、貴重卵であることなどの理由から希望される場合は、顕微授精(「顕微授精法(従来法ICSIと新法Piezo-ICSI)」参照)を行う場合があります。その場合、受精する確率は約85%と上昇傾向にあります。顕微授精実施の有無については採卵当日の精子の状態を見て担当医が決定します。


培養最新機器Geriタイムラプスインキュベーターの導入
Geriタイムラプスインキュベーターとは、常に胚を観察できることで、受精の状態を正確に判断できる培養最新機器です。 また培養器の開閉を最小限に抑えられることより、温度やPH濃度を安定して維持することが可能となり、最適な培養環境が提供できます。
この機材の最大の特徴は、従来のタイムラプス培養器では不可能だった加湿培養が可能となり、より良好な培養成績を得ることができると予想されることです。当クリニックでは世界最高クラスの培養機器を丸の内院・新宿院合わせて28台導入し、全ての培養は当機器を使って行います。


培養室紹介
患者様のデーターを専門分野が慎重に管理しております。
お預かりしました大切な凍結検体は温度変化があれば24時間連絡されるサポート体制を構築しています。