診療内容

緊急時の対応方法

緊急時の対応として、鉗子分娩・吸引分娩及び緊急帝王切開などが考えられますが、可能な限り速やかに分娩を完了させる必要がある場合に行われる産科手術で、“急速遂娩”と呼ばれます。急速遂娩が必要となるケースについては母親学級や診察時に説明させていただきますが、不明点があれば担当医師にご相談ください。また、鉗子分娩、吸引分娩は分娩異常、母体合併症がない正常分娩でも娩出をスムースに行うためや、麻酔分娩のためうまくいきむことができない場合に使用することがあります。

鉗子分娩

鉗子(かんし)は、金属製の器具で、縁は丸く、胎児の頭にぴったり合うように作られています。鉗子による分娩がうまくいかない場合は帝王切開が行われます。ごくまれに、鉗子を使うことによって新生児の顔にあざができたり母親の膣が傷ついたりすることがありますが、自然に治ります。

吸引分娩

吸引分娩器は、分娩を補助する目的で鉗子の代わりに使用することがあります。吸引分娩器は、金属かゴムのような素材でできた小さなカップが吸引器につながった構造になっています。このカップを腟に挿入し、胎児の頭皮に吸着させます。ごくまれに、吸引分娩器によって胎児の頭皮にあざができることがあります。

緊急時の母体・胎児の搬送

高次医療施設へ搬送が必要なケースは以下のような場合です。

  1. 切迫早産 36W未満の破水、陣痛発来
  2. 出血性ショック 初期治療を行っても止血困難
  3. 重症妊娠高血圧症候群 降圧薬を使用しても血圧のコントロールが不可
  4. 新生児の呼吸障害 初期処置を行っても呼吸が安定しない

など。

急速遂娩の副作用・合併症

鉗子分娩、吸引分娩では自然分娩と比較すると以下のような副作用や合併症が考えられます。

母体について:腟や会陰部の裂傷頻度の増加
赤ちゃんについて:頭蓋内出血、分娩外傷、顔面神経麻痺、新生児仮死の頻度など。

ただしこのような副作用や合併症は鉗子・吸引分娩自体が引き起こしたと考えるより、鉗子・吸引分娩を必要とするような赤ちゃんが危険な状態にあったことや、難産が理由であるとお考えください。

帝王切開で考えられる副作用や合併症は以下の通りです。

  1. 麻酔の合併症
  2. 開腹手術であるため経腟分娩と比較し術中出血量は多くなり、輸血の必要性
  3. 術中合併症として、癒着があった場合で、膀胱や腸管を傷つけてしまう可能性
  4. 術後合併症として、「帝王切開とは」にて説明させていただいた肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)以外にも、肺に水がたまる(肺水腫)、再出血、感染、縫合不全、腸閉塞(イレウス)などがあり、赤ちゃんには最も安全な分娩方法ですが、母体にはさまざまな合併症が起きる可能性があります。
輸血について

弛緩出血(分娩後の子宮収縮不良)や頸管裂傷などにより、分娩時に思いがけず大量に出血することがあります。この場合、救命のために絶対必要な処置として輸血を行います。輸血が必要になる場合があることをあらかじめご理解ください。

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